1 想定読者とメモしておきたい用語
Clash Verge Rev は Mihomo(旧 Clash Meta)系コアを GUI で束ねるデスクトップ向けクライアントのひとつで、Windows や macOS と同様に Linux でも利用できます。本記事はパッケージまたは AppImage を入手し、アプリが一度はメイン画面を表示できるところまで済んでいる前提です。バイナリの配置や systemd だけでヘッドレス運用したい場合は、Linux に Mihomo を導入し systemd で自動起動するガイドと役割が異なります。GUI で「毎日触る操作」を知りたい方が対象です。
画面を読むときに混同しやすいのは次の三点です。プロファイルは現在読み込んでいる YAML 一式(ローカル編集と購読の合成結果を含む)、購読(プロバイダ)はリモートから定期的に取り込むノード定義、プロキシグループは select や url-test など型の違う出口束ねです。いわゆる戦略グループという呼び方で検索してくる読者も多いですが、YAML 上ではこのグループに相当します。ルールモード(Rule)はドメインや GeoIP に応じて DIRECT か各グループへ振り分ける動作を指し、TUN はその振り分け結果をどの経路でカーネルに渡すかという別レイヤーの話です。後半で改めて結びつけます。
ディストリビューションによってメニュー項目の日本語化の度合いは異なりますが、「Subscriptions」「Proxies」「Mode」「TUN」「System Proxy」といった英語ラベルがそのまま出る場合があります。ビルド間でアイコンの位置だけ変わることもあるため、用語の対応を頭に置いて読み進めてください。
2 Linux での起動・トレイ・Wayland の実務
多くの環境ではウィンドウを閉じてもステータストレイ相当の領域に常駐します。GNOME ではトレイ拡張や統合トレイが必要になることがあり、起動直後にアイコンが見えない場合はシェルの設定を確認してください。KDE や Xfce では比較的素直に見えることが多いです。Wayland セッションではポータルや権限ダイアログの挙動が X11 と異なるため、初回だけプロンプトを見逃さないようにするとよいでしょう。
自動起動はデスクトップ環境の「ログイン時に起動」へ登録する方法が一般的です。複数のプロキシ GUI を同時に自動起動させると、どちらがシステムプロキシや TUN を握っているかわからなくなるので、使わない方は無効化してください。ターミナル偏重のワークフローでは、環境変数 HTTP_PROXY などと併用する読者もいますが、本稿では GUI のスイッチを軸に説明します。
CAP_NET_ADMIN 相当の権限やポリシーキットの設定が絡むことがあります。権限を広げすぎず、配布元ドキュメントで推奨される範囲に収めるのが安全です。
3 購読更新(手動・自動)を確実に終わらせる
ノード名が古い・タグが増えない、というときはまず購読更新です。メイン画面の購読または Profiles/Subscriptions に相当する一覧で対象行を選び、更新ボタンまたは更新アイコンを押してリモートから再取得します。成功するとタイムスタンプや件数が変わり、Proxies 一覧にも反映されます。長時間放置した URL は期限切れになることがあるので、発行元でトークンを再発行してもらう運用にするとトラブルが減ります。
自動更新間隔は短くしすぎるとレート制限に抵触しやすいです。プロバイダが推奨する間隔(多くは数時間〜一日)を守り、混雑時は手動で一度だけ更新する方が無難です。失敗時はアプリ内ログを開き、HTTP ステータスや TLS エラーを確認してください。企業ネットワークではフィルタにより購読ドメインだけ遮断されることがあるため、別回線で試すと切り分けが早くなります。DNS の話題は FakeIP とセキュア DNS の整理記事も参照すると全体像がつかみやすいです。
更新したのにノードが変わらないように見えるとき
別プロファイルがアクティブになっている、UI がキャッシュした一覧を握ったまま、セレクトグループが旧メンバー名を指している、といったパターンがあります。アクティブなプロファイルを再確認し、必要ならコアを一度停止してから再起動してください。それでも改善しない場合は、同じ購読 URL をブラウザまたは curl で開き、期待した YAML が返るかを確認します。User-Agent を変える必要があるサーバーでは、クライアント側の既定 UA が弾かれることもあります。
4 プロキシグループでノード切替するコツ
Proxies(または同等)画面には YAML で定義されたプロキシグループが縦に並びます。select 型はクリックでメンバー一覧が開き、そこでノード切替ができます。url-test や fallback は自動で出口を替える設計なので、「このサーバーに固定したい」場合は購読側が用意した手動用セレクト(Manual/手動など)を選ぶのが一般的です。親子関係のある構成では、上位で自動系を選ぶと下位の手動指定が意味を失うことがあるため、実際に外向き通信へ効いているグループを一つずつ辿る癖があると混乱が減ります。
遅延テストの数値は参考程度に留めましょう。ICMP や軽い HTTP に基づく値と、ブラウザでの体感やビデオ配信の実負荷は一致しないことがあります。ストリーミングやオンラインゲームでは、自動ローテーションよりセレクトでの据え置きが安定することが多いです。複数ウィンドウや複数クライアントで別々のグループを触ると、どれが保存されているかわからなくなるので、操作後にメイン画面へ戻って現在値を確認してください。
5 ルールモード・グローバル・ダイレクトの使い分け
ルールモード(Rule)では設定ファイルのルールに沿ってフローごとに DIRECT と各プロキシグループへ振り分けられます。国内 CDN や決済ドメインを海外出口へ流さない、という意味で日常の既定にすべきです。グローバル(Global)は「選択中のプロキシ側へ広く寄せる」動きで、疎通確認やルール起因かノード起因かを切り分けたいときに短期だけ使います。ダイレクト(Direct)はプロキシを極力迂回するモードで、キャプティブポータル確認などに向きますが、長時間据え置きはポリシー次第では避けた方が無難です。
切り替え直後は既存 TCP 接続が古い経路を保持しているため、挙動が変わらないように見えることがあります。ブラウザタブの再読み込み、対象アプリの再起動、短時間のコア再起動を試してください。モード UI は画面上部や設定に「Mode」などとしてあり、ビルドによってラベルが英語のままの場合があります。
グローバルを長時間オンにすると国内サービスまで遠回りになり、ログイン検証エラーや決済エラーが起きやすくなります。テストが終わったらルールモードへ戻すのが安全です。
6 システムプロキシと TUN:Linux での選び方
システムプロキシは GTK/Qt アプリやブラウザの自動検知設定が追従しやすく、軽量でトラブルも少なめです。一方、プロキシを無視するゲームや一部デスクトップアプリまで一本化したい場合はTUN が候補になります。TUN は仮想インタフェース経由でトラフィックをカーネルレベルで取り込むため、権限や既存 VPN/コンテナネットワークとの競合に注意が必要です。概念の深掘りは Clash Verge Rev の TUN モード解説が有益です。
Linux では iptables/nftables やルーティングテーブルが絡み、他製品のフルトンネル VPN と同時常駐させると競合しやすいです。切り替えるときは一方を完全停止してからもう一方を有効にしてください。systemd-resolved と DNS モードの組み合わせで名前解決だけ別経路になるケースもあるため、不思議な挙動のときは DNS 設定を疑うと早いです。
7 AppImage を使うときの実行権限と更新
AppImage は単一ファイルで配布されることが多く、ダウンロード後に実行権限を付与してから起動します。ターミナルなら chmod +x Clash*.AppImage のように指定し、ファイルマネージャからプロパティで許可を変更しても構いません。初回起動時に統合ツール(appimaged など)へ登録するとメニューから呼び出しやすくなりますが、セキュリティ方針によっては手動起動のままにしておく選択もあります。
バージョンアップ時は新しい AppImage を入手して差し替えます。設定ディレクトリはユーザーのホーム配下に保存されることが多く、ファイル名を変えてもプロファイルや購読は引き継がれるケースがほとんどです。逆に「クリーンインストールしたい」ときは設定フォルダをバックアップしてから退避してください。Flatpak や distro パッケージを使う場合はサンドボックスの権限が絡むため、公式の説明に沿ってポータル許可を確認してください。
8 安定運用のコツ:スリープ復帰・複数クライアント・ログ
ノート PC のスリープ復帰直後は TUN インタフェースやルーティングが不整合になることがあります。通信が不安定なときは GUI からコアを一度停止して再起動するだけで直ることが多いです。複数の Clash 系 GUI を並行インストールしている場合、どれがシステムプロキシを書き換えているかがずれやすいので、使わないアプリは終了しておくか、OS 側でプロキシを明示的にオフにする癖があると安全です。
ログは問題発生時の手がかりになります。HTTP エラー、DNS タイムアウト、TLS の失敗メッセージをメモしておくと、購読側やルール側どちらを疑うべきかがはっきりします。ルール YAML を自分で編集し始めたら、バージョン管理ツールに載せて差分を残すとロールバックが楽になります。
9 よくある質問
- 購読更新がすぐ失敗する: URL の期限切れ、会社フィルタ、User-Agent 制限、時刻ずれが典型です。ブラウザで同じ URL を開き、本文が返るか確認してください。
- ルールなのにすべてプロキシ側へ見える: ルール末尾の
MATCHがプロキシへ落ちている、DNS が FakeIP と衝突しているなどが考えられます。モードと DNS をあわせて見直してください。 - TUN をオンにすると別 VPN が死ぬ: 双方がルーティングを握りにいく競合です。同時常駐を避け、切り替え時は完全終了してください。
- ターミナルだけプロキシしたい: GUI のシステムプロキシだけでは届かない場合、シェルに環境変数を設定する方法と併用する読者もいます。要件に応じて選択してください。
10 まとめ
Linux 版 Clash Verge Rev の日常操作は、正しいプロファイルで購読を更新する → セレクト型プロキシグループでノードを選ぶ → 基本はルールモード、短期だけグローバル → 必要に応じてシステムプロキシか TUN を選ぶという流れに収まります。どこか一つでもずれると「更新したのに古い」「ルールなのに遅い」という印象になりやすいので、初日に画面ラベルと用語の対応をメモしておくとのちが楽です。
ターミナルと systemd だけでヘッドレス運用するスタックは軽量ですが、購読エラーの追跡や複数プロファイルの diff、TUN と DNS の切り分けをすべてシェルとログファイルに頼ると学習コストが跳ね上がります。対して単体バイナリ配布の軽量 GUI は導入が速い反面、長期的なルール管理や内核更新の見通しで差がつくこともあります。Linux デスクトップで購読からルール、tunnel ログまで一枚のダッシュボードに寄せたい場合は、内核のアップデート導線や YAML 編集 UI が揃っている Clash Verge Rev が現実的な落としどころになりやすく、AppImage 運用とも相性がよいです。同じテーマで詰まっているなら、一度公式ダウンロードページで自分のディストリビューションに合う形式を選んで試してみてください。