1 なぜ今 Clash Verge Rev か
Clash for Windows は多くの利用者にとって「最初の Clash クライアント」でしたが、リポジトリの凍結以降、コアやルール方言の進化に追従できません。未知のサードパーティ改変版に頼るほど、署名と更新経路の信頼性が曖昧になりがちです。Clash Verge Rev はオープンソースの GUI フロントエンドとして継続的にリリースが出ており、裏側では Mihomo(旧 Clash.Meta)系コアを載せられる構成が一般的です。つまり「見た目と操作はモダンなまま、中身は現行のトランスポートや DNS まわりに追従できる」というのが、CFW から乗り換える最大の実利です。
もちろんクライアントは好みの問題でもあります。ただし Windows でルールベースのプロキシを職場や開発環境の一部として使うなら、更新が止まったバイナリを使い続けるリスクは意識的に下げた方がよい、というのが本ガイドの出発点です。以降の手順は、管理者権限や仮想ネットワークドライバなど、Windows 特有の確認ポイントを厚めに書いています。
2 動作環境と入手元
64bit の Windows 10 以降を想定します。アーキテクチャは一般的な x64 向けビルドを選べば足ります。インストーラー型とポータブル型のどちらが出ているかはリリース時点で変わるため、公式の GitHub Releases を一次情報として見てください。検索エンジン経由のミラーサイトは、ファイルが差し替えられている事例が過去に多いので避けるのが安全です。
初めて GitHub から実行ファイルを落とす場合、ブラウザや Windows Defender SmartScreen が「よく知られていないアプリ」と表示することがあります。これはコード署名の有無やダウンロード数に基づくヒューリスティックであり、必ずしもマルウェアを意味しません。それでもハッシュの照合や、可能なら公式チャネルでの配布物確認をしてから実行する習慣は持っておく価値があります。
安定版とプレリリースが並んでいる場合、日常利用では安定版を選ぶのが無難です。新機能を試したい場合でも、本番マシンではまず仮想環境やサブユーザで動作確認してから本適用するのがおすすめです。
3 インストールと SmartScreen
インストーラーを実行し、ウィザードに従ってインストール先を決めます。企業 PC では Program Files 配下への書き込みに管理者承認が必要なことがあり、その場合は IT 部門の方針に従ってください。ポータブル展開を選ぶ場合は、ユーザフォルダ内など書き込み可能な場所に置き、ショートカットだけをスタートメニューに登録する運用もよく見られます。
SmartScreen でブロックされたときは、いったんダイアログを読み、発行元とファイル名が期待どおりか確認してから「詳細情報」から実行を許可する流れになります。ここで重要なのは、本当に公式アセットかどうかを先に検証することです。焦って許可ボタンを連打するのは避けましょう。
4 初回起動とサービスモード
初回起動後、設定画面に「管理者として実行」や「サービスモード(Service Mode)」に関する項目があることが多いです。TUN モードや仮想アダプタの作成は権限が絡みやすく、毎回手動で管理者起動するより、アプリ内の推奨オプションに沿ってサービスを入れた方が運用が楽になるケースが大半です。UI のラベルはバージョンで微妙に異なるため、「TUN を有効にしたい」「常駐させたい」という目的を頭に置き、説明文を読みながら進めるのが安全です。
サービスインストールに失敗するときは、既存のセキュリティソフトがブロックしていないか、別の Clash 系アプリが同じポートやドライバを占有していないかを疑います。古い CFW が残っている場合は、先に終了・削除してから Verge Rev 側のサービスを入れ直すと通ることがあります。
5 プロファイルと購読の取り込み
プロバイダーから渡されるのは「Clash 形式の購読 URL」であることが多いですが、生の URI をそのまま貼り付けられる画面を探します。名称は「プロファイル」「Subscription」「Remote Profile」など様々ですが、やることは同じで、HTTPS の購読 URL を登録し、更新ボタンで YAML を取り込む流れです。取り込み後は、プロキシグループでノードを選び、ルールモードかグローバルかを状況に合わせて切り替えます。
購読が Clash YAML ではない場合は、信頼できるコンバータを経由する必要があります。自前で subconverter を立てるか、既存の変換サービスを使うかは脅威モデル次第ですが、変換後の設定ファイルに余計なアウトバウンドが紛れ込んでいないかは必ず目視で確認してください。変換サイトに元 URL を貼る行為は、URL に認証トークンが含まれるタイプでは漏えいリスクになります。
ルールや DNS を詰めたい場合は、コミュニティの Rule Provider や DoH 設定を組み合わせます。DNS まわりを深くやるときは、Meta カーネルでの DoH と FakeIP の整理も参照すると、TUN と整合しやすいです。
6 システムプロキシと TUN の使い分け
まずは「システムプロキシをオン」にしてブラウザや対応アプリが通るか確認する、というのが最短です。Windows はシステムプロキシ設定を参照しないアプリが依然として多く、PowerShell やコンテナ、一部ゲームクライアントでは期待どおり動かないことがあります。そのギャップを埋めるのが TUN です。仮想ネットワークインターフェース経由でトラフィックを内核に流し込む考え方は、CFW 時代から変わりませんが、Mihomo 側のスタック指定や DNS ハイジャックの細部は現行ドキュメントに合わせて調整します。
TUN を有効にする手順や注意点(管理者権限、サービスモード、検証コマンドなど)は、別稿でステップを厚く書いています。Clash Verge Rev の TUN モード解説とあわせて読むと、インストール直後の「とりあえずブラウザだけ」から、開発環境全体への拡張までスムーズに進められます。
curl を叩き、接続ログにプロセス名が載るかを Clash Verge Rev の接続ビューで見ると、TUN が効いているか切り分けしやすいです。
7 Clash for Windows からの移行
CFW 利用者は、プロファイルやルール断片を資産として持っていることが多いです。完全な自動インポート機能に依存せず、購読 URL を Verge Rev に登録し直すのが最もトラブルが少ないです。ローカルに保存していた config.yaml をそのまま流用したい場合も、バージョン差で無効になったキーや、コア固有の拡張があるため、起動ログで警告をゼロに近づけるつもりで差分を見ていく必要があります。
ポート番号の衝突にも注意です。従来 7890 を mixed ポートにしていたなら、新クライアントでも同じ値を使うと他ツールとの兼ね合いが分かりやすいです。逆に別アプリが既にそのポートを掴んでいる場合は、どちらかを変更します。ルールで PROCESS-NAME や GEOIP を多用していた場合は、GeoIP データベースの更新機能が GUI から行えるかを確認し、古い Country.mmdb のまま放置しないようにします。
複数端末で同じポリシーを再現したいときは、最終的には Git 管理できる設定ディレクトリ構成や、サーバ側 Mihomo に寄せる選択肢もあります。デスクトップだけなら GUI クライアント、ヘッドレスなら Linux での Mihomo と systemd、という住み分けも現場ではよくあるパターンです。
8 トラブルシューティング
- 起動直後にプロキシが効かない: システムプロキシトグルがオフになっていないか、別の VPN がルートを握っていないか確認します。Windows の「プロキシ」設定画面とアプリ内表示が食い違うときは、一度両方をオフにしてから Verge Rev 側だけでオンに戻します。
- TUN をオンにすると全通信が止まる: 管理者権限・サービスモード・仮想アダプタの三点セットを再確認します。競合するフィルタドライバを入れたセキュリティ製品があると、アンインストールや例外設定が必要なことがあります。
- 購読更新が失敗する: URL の期限切れトークン、プロバイダー側のレート制限、中間の TLS 検査を行う企業プロキシなどが原因になりがちです。ブラウザで同じ URL を開けるか、別回線で試すかを切り分けます。
- 特定アプリだけ迂回できない: その実行ファイルが独自のプロキシ設定を持っているか、ループバックをバイパスしているかを疑います。必要ならプロセス単位のルールや TUN 側の例外を検討します。
9 まとめ
Clash for Windows から Clash Verge Rev への移行は、単なる「別アプリに乗り換える」以上に、更新可能なコアと現行のルール方言に戻るという意味があります。インストール時の SmartScreen、初回の権限とサービス、購読の再登録、システムプロキシと TUN の段階的な有効化——この順番を踏むと、途中でネット全体が不通になるリスクを抑えつつ、開発者やヘビーユーザが求める「端末全体の一貫したルーティング」まで辿り着きやすいです。
GUI クライアントは設定の見える化に優れ、ログの読み方さえ身につけばトラブル時の切り分けも速くなります。一方で、公式ビルドを選び、購読 URL を雑に第三者に渡さない、という運用面の規律は以前と変わりません。技術と運用の両輪で整えると、Windows 上の Clash 体験はむしろ CFW 全盛期より安定したものになり得ます。
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