1 更新が失敗する典型パターン
Clash Verge Rev はフロントエンドと Mihomo(旧 Clash Meta)カーネルを組み合わせた構成です。初回セットアップや「カーネル更新」ボタンは、多くの場合インターネット越しに公式ビルドを取得してデータディレクトリへ展開します。ここが失敗すると、画面には短いエラーしか出ず、ログを見ないと原因が掴みにくいのが実情です。
代表的な要因は次のとおりです。オフライン/フィルタリングで GitHub やミラーへ到達できない、TLS インタセプトを行う企業プロキシで証明書検証が落ちる、ウイルス対策が一時フォルダや実行ファイルの書き換えをブロックする、権限不足でサービスモードや Program Files 配下の展開に失敗する、などです。いずれも「アプリ全体を入れ直す」前に、カーネルバイナリだけを手で置けるかを試す価値があります。
なお、本稿は技術的な復旧手順の共有であり、利用規約や法令、職場の IT ポリシーを逸脱する行為を推奨するものではありません。社内端末では許可された経路でのみファイルを入手してください。
2 差し替え前の共通準備
どの OS でも最初にやることは同じです。トレイから完全終了し、可能なら設定画面で「サービスモード」を一時的にオフにしてカーネルプロセスが残っていない状態にします。Windows ではタスクマネージャーに verge-mihomo や mihomo が残っていないか、macOS ではアクティビティモニタで同名プロセスがいないかを確認すると安全です。
次に、置き換え対象のファイルを必ずバックアップします。拡張子を .bak に変える、別フォルダへコピーする、どちらでも構いません。手動更新はミスすると一時的に起動不能になるため、戻せる状態を作ってから進めてください。
入手するアーカイブは、CPU アーキテクチャに合わせます。Windows 一般的な PC は amd64、Apple Silicon の Mac は arm64、Intel Mac は amd64 の macOS 向けビルドを選びます。公式の Mihomo リリースはオープンソースの MetaCubeX/mihomo の GitHub Releases から取得するのが素直です(クライアント本体のインストールパッケージは、別途 当サイトのダウンロードページを優先してください)。
mihomo-windows-amd64.exe などでも、Clash Verge Rev 側が探索するのは verge-mihomo.exe(名称はバージョンで変わり得ます)のことが多いです。差し替え後に UI が認識しないときは、まず名前と配置場所の不一致を疑ってください。
3 Windows:カーネルが置かれる場所の目安
現行の Clash Verge Rev は、ユーザデータを ローミングプロファイル配下にまとめる構成が一般的です。エクスプローラーのアドレス欄に次を貼り付けると開けます。
%APPDATA%\io.github.clash-verge-rev.clash-verge-rev
実際のログでは、この直下に profiles や verge.yaml が作られる例が報告されています。カーネル実行ファイルは、バージョンやインストール形態によって同一フォルダ直下に置かれるか、サブディレクトリに展開されるかが分かれるため、「フォルダを開いて verge-mihomo または mihomo を含む .exe を検索する」のが確実です。設定画面に「設定フォルダを開く」「データディレクトリを表示」系の項目があれば、そこから辿るのが最短です。
ポータブル運用やカスタムインストール先にしている場合は、上記以外の場所にコアが展開されることがあります。そのときは UI のパス表示か、起動ログに出る構成ファイルパスを手がかりにしてください。初めて Windows に導入する場合は、Windows 向けインストール手順で権限とサービスモードの前提を押さえておくと、後の手動更新がスムーズです。
4 Windows:手動差し替えの手順
- Clash Verge Rev を完全終了し、サービスモードを利用している場合は停止できる状態にする。
- エクスプローラーで上記
%APPDATA%\io.github.clash-verge-rev.clash-verge-revを開き、既存のカーネル.exeを探してバックアップ。 - 公式 Mihomo の Windows 向け ZIP から、自分の CPU に合う実行ファイルを取り出す。
- 元ファイルと同じファイル名・同じ場所に上書き保存する(名前が異なる場合はリネーム)。
- 管理者権限やセキュリティソフトのプロンプトが出たら、発行元とパスを確認のうえ許可する。
- Clash Verge Rev を起動し、設定のカーネル欄でバージョン表記が期待どおりか確認する。
コマンドラインに慣れていれば、置き換え前後で verge-mihomo.exe -v のようにバージョン表示を叩いて一致を確認する方法もあります。ただしパスを誤ると別コピーを見ていることがあるので、GUI の表示と突き合わせるのが安全です。
5 macOS:カーネルが置かれる場所の目安
macOS ではユーザライブラリ以下の Application Support が一般的な保存場所です。Finder で「移動」→「フォルダへ移動」から次を開いてください(先頭の ~ はユーザホームです)。
~/Library/Application Support/io.github.clash-verge-rev.clash-verge-rev
中身は Windows と同様、プロファイルや設定 YAML と並んでカーネルバイナリが置かれます。Apple Silicon と Intel で取得すべきアーカイブが異なるため、自分の Mac のアーキテクチャをターミナルの uname -m などで確認してからダウンロードします。ゲートキーパーや検疫フラグでブロックされた場合は、公式ビルドであることを確認したうえで、必要に応じてターミナルから検疫属性の解除手順(xattr)を検討します——実行可否は組織ポリシーと自己責任の範囲で判断してください。
macOS での初回セットアップや権限まわりは、macOS 向けインストール記事とあわせて読むと、手動更新後に TUN やシステム拡張で詰まるケースを減らせます。
6 macOS:手動差し替えの手順
- メニューバーから Clash Verge Rev を終了し、関連プロセスが残っていないことを確認する。
- Application Support 内のデータフォルダを開き、既存のカーネルファイル(名前は
verge-mihomoやmihomoなど)をバックアップ。 - Mihomo の macOS 向け公式ビルドから、
arm64またはamd64に一致するバイナリを取り出す。 - 元と同じファイル名で上書きする。パーミッションが実行可能になっているかを確認する。
- アプリを起動し、カーネルバージョン表示と実ログにエラーが出ないかを見る。
アプリ署名とは別に、手で入れたバイナリはセキュリティソフトに止められることがあります。その場合は一時的に除外を設定するより前に、本当に置き換え先が一箇所かを再確認してください。複数コピーがあると、UI は新しい版を指しているのに実プロセスは古いパスを実行している、という状態が起きえます。
7 差し替え後の検証
置き換えが成功しているかは、次の三点で確認すると抜け漏れが少ないです。第一に、設定画面の カーネルバージョン表示が期待値になっているか。第二に、ログに「起動したコアの版」や読み込んだ実行ファイルパスが示されていればそれを読む。第三に、実通信で新しいプロトコルやルールが期待どおり動くか——既知のノードで軽く接続テストします。
TUN や DNS を有効にしている場合は、カーネル更新後にだけ挙動が変わることがあります。モードごとの切り分けは TUN モード解説も参照してください。ルールや FakeIP の細部をいじっている場合は、カーネル差分で警告ログが増えないかもあわせて見ます。
8 うまくいかないとき
- UI は新しいが通信がおかしい: サービスモードが古いバイナリを掴んだままになっていないか。サービス再インストールや OS 再起動を試す。
- 起動直後にカーネルエラー: ファイル名・配置・実行権限の三点に戻る。Windows なら別ユーザの
APPDATAを見ていないかも確認。 - 更新は成功した風だがすぐ古い版に戻る: 自動更新タスクが別経路で古いファイルを再配置していないか、複数インストールが競合していないかを疑う。
- 企業ネットのみ失敗: ブラウザで同一 URL が開けるか、中間証明書が必要かを確認。必要なら許可された端末で取得しオフライン搬入する。
9 まとめ
Clash Verge Rev の カーネル更新失敗は、ネットワーク・権限・ファイル名の不一致のどれかに集約されることが多いです。Windows なら %APPDATA%\io.github.clash-verge-rev.clash-verge-rev、macOS なら ~/Library/Application Support/io.github.clash-verge-rev.clash-verge-rev を基点に実体を特定し、公式 Mihomo ビルドを期待される名前で上書き、その後に GUI とログで版を突き合わせる——この流れを覚えておけば、オフライン環境や自動更新が塞がれた現場でも自力復旧の幅が広がります。
GUI クライアントは設定の可視化に強く、手動更新は最後の手段ではありますが、一度手を動かしてパスとファイル名の対応を理解しておくと、以後のトラブルでも冷静に戻れます。本体パッケージの入手と各 OS の初期セットアップは、ダウンロードページや各プラットフォーム向け記事から進めると、公式経路と手動カーネル更新の役割分担も分かりやすいです。
安定したクライアントと最新の Mihomo を組み合わせることで、ルールベースのプロキシ運用は引き続き実用的です。同種ツールと比べても、設定の見える化とコミュニティの活発さのバランスは Clash 系に分があります。まずは環境に合ったビルドをそろえ、落ち着いてカーネルだけを差し替える、という順番が最も安全です。